銭湯いこにVol.16「2012年は伊勢からスタート!」その4(ファイナル)

投稿日: 2012年01月31日(火)23:06


photo/写真師マツバラ(松原豊) txt/サルシカ隊長(奥田裕久)

4回シリーズで続けてきたサルシカ銭湯企画「2012は伊勢からスタート!」は、ついに今回でファイナルを迎えるのだ。
飲んで食べて風呂入ってまた繰り返して・・・
その凄まじさは回を重ねるごとに常軌を逸しつつある(笑)。
そろそろここらで基本に戻らねばならんのではないかとみんなと話しつつも、
今回は熱湯沸騰膨満酒池肉林状態で突き進むのだ。

ワレワレがあとにした伊勢湯は、それはそれは人情味にあふれた素晴らしい銭湯であった。
写真を撮る時、入浴中のお客さんにこれまで断られたことはないが、「オレもいっしょに写してくれ」と大股開きでポーズをとった人がいたのはここが初めてであった。

湯につかってポカポカになったら冷たいビールである。
さて、どこへいこうか。
そんなアテがあるはずがない。
この企画はノーアポの出たとこ勝負取材なのだ。

「どこいくべ~」
「うまい酒とうまい魚のある店~」
「いいね、刺身だね、刺身」
「よっしゃ~、熱燗や~」

何気に方向性が見えて定まってくる。

「あ、そういやさっきの大股開きのおいちゃんが名刺を置いてったな。店やっとると言っとったぞ」
「何屋や何屋や」
「いろ鳥どり・・・名古屋コーチン、熊野地鶏、黒毛和牛・・・」
「おい、黒毛和牛って鳥やったんか」
「知るか、アホ」
「でもこれもせっかくの縁やでな。行くか、大股開きのおっさんとこへ」
「行こう行こう」
「鳥や、ビールや、焼酎や!」

ま、こんな風にきまぐれに方向性は急変するのである(笑)。

しかし、ここへきてもワレワレはまっすぐに目的地へとは向かえない(笑)。

「おおお~、この路地はしびれるぞ~」
「スナック千秋、ええ名前やあ~、ちょっと陰のあるママがひとりでやってんねん」
「今晩は二階に泊まってくって」
「くふううう、たまらんねぇ」

ま、アホである。
こんなことをやっているからなかなか店に到着しない。
しかも道に迷う。
スマフォを出して確認したら、まったく反対方向に進んでいた(笑)。

迷っている間に、三重県唯一の単館系の映画館「新富座」にたどり着く。
想像していたより新しい施設なのだ。
映画も見たいけれど、いまはひとまずビールなのだ、熊野地鶏なのだ。

夕暮れの伊勢の町。
三重を代表する餃子の店「美鈴」がちらりと見える。

「胃袋と体力に余裕があったら戻ってくるからな、待ってろよ、美鈴!」

そう言い残して歩道橋を渡る。

そしてやってきました、伊勢市曽称にある「いろ鳥どり」。
大股開きのおっちゃんことジョージさんは仕込みの真っ最中であった。

「本当に来てくれたんだ~、うれしいなあ、こういう縁ってあるんだね~」

ジョージさんは嬉しそうにワレワレを招き入れてくれた。
店は細長く、カウンターが伸びた奥に座敷がある。
ワレワレはカウンターに並んで座った。

ジョージさんは青森の三沢出身。
パッと見はわからないが、アメリカ人とのハーフだという。
いろんな場所に暮らして、一番気に入って長く暮らしているのがこの伊勢だという。

こちらにはハートランドの生がある。
伊勢では数少ない店だという。
うれしいではないか。
もちろん全員ハートランドをもらって、まず乾杯!

「オススメは?」
「白ホルモン。これはうまいで。でも今日はないねん」
「じゃあ他のオススメは?」
「やっぱり熊野地鶏やねぇ、刺身でいけるよ。でも今日はないねん」

おいおいおい、オススメばかりがないやないか!!

「まあまあ」とジョージさんは笑って、「まかせておいてください! うまいもんつくります!」

というわけでいきなりストレート直球で出てきたのが、この肉。
黒毛和牛。
ワサビ醤油がいっしょに出てくる。

「生でいけるけど、ちょっと炙るなりご自由にどうぞ」

ああああ。
あかん。
いきなりノックアウトだ~。
やられた!

そしてタン塩にふたたびやられて、続いて巨大シイタケのあまりのうまさにカウンターの全員で吠えた。

「な、な、な、なんじゃ、このうまいシイタケは! 肉がいらん!」

ま、これはかなりオーバーであるが、さほどにうまかった。

ビールのんで食べて、焼酎の水割りとロックで勝負して、ボトルまで入れちゃって。
もう今宵のサルシカ隊は暴れまくりなのだ(笑)。

ところで。
この「いろ鳥どり」の近くにも銭湯があるにも関わらず、なぜ少し離れた伊勢湯さんに通っているのか。
それは「伊勢湯さんが一番熱いから!」だという。

「アツアツの一番風呂で体を引き締めてから店に入るのがもう習慣でね。家にも風呂はあるけど、やめられないね~」

もうジョージさんは、東北生まれの三重在住ハーフなのに、まるで江戸っ子みたいなのだ(笑)。

いろ鳥どり
伊勢市曽称2-1-18
年中無休
営業時間 16:00ぐらいから深夜まで

いろ鳥どりを出て、少し歩いて酔いを冷まし、続けて2軒目の銭湯に。
わくわくおんせんいづつ。

完全ノーアポで取材をお願いして入らせてもらった。
店主さんは最初は驚いていたけれど、快く撮影を許可してくれた。
ありがたい。

が、モーレツな湯気で誰が誰だかわかりません(笑)。
いやいや、こちらも十分あちあちのいい湯でした!

井筒温泉~わくわくおんせんいづつ~
伊勢市曽祢1丁目-10-11
☎0596-78-7863
日曜定休
14:00~24:00

で、汗と共にすっかり酔いも冷めて、ワレワレが向かったところは・・・・・

ジャジャン!!
出ましたあ、餃子の美鈴です!!
三重を代表するキングオブ餃子!!

みんなそれぞれ餃子1皿、ビール1本を頼み、しみじみと満足。
本当に今日はよく食べ、呑み、入り、遊び、笑った。
文句なく楽しかった。
幸せだ!

ぎょうざの美鈴
三重県伊勢市宮町1-2-17
営業時間:17:00 ~ 24:30
定休日:毎週月曜日

そして午前0時を回る頃、ようやく本日の宿「風見荘」に戻ったのであった。
伊勢市駅に集まったのが午前11時半だったから、12時間以上も伊勢を歩き続け、銭湯に入り、食べて飲んできたのだ。
疲れないはずがない。

みなベッドに入るなり、気をうしなうように寝た。
そして早朝から、ひとり、またひとりと、それぞれの仕事に向かって宿を出ていく。
隊長のワタクシはそのまま紀北町へいく予定だったので、一番最後まで宿に残り、そしてのんびりと旅立ったのであった。

~「銭湯いこに」伊勢編おわり~